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風船がつないだ小学生との出会い ストーリーが持つ力とは

あなたが小学生のころを思い出してほしい。遠足、運動会、林間学校、合唱コンクールなどワクワクしたりドキドキしたりした感情とともに思い出される記憶が様々あるだろう。2018年12月、埼玉県にある富士見市立ふじみ野小学校では、創立20周年記念式典で4年生の児童が風船に思い思いのメッセージを付けて飛ばすことになった。運よく誰かが拾って返事をくれたならば、今まで無縁な両者の間に「つながり」が生まれる。風まかせの偶然が生み出す新しいストーリーは運命性もあり、児童ならずとも期待に胸が高鳴るイベントだ。

GDO(ゴルフダイジェスト・オンライン)は幸運にも、この風船が生み出す運命に巻き込まれた。ふじみ野小学校からのメッセージを見つけたのは、偶然、本社に来ていたGDO名古屋支社の女性社員。社員コンペで千葉県内のゴルフ場をプレー中、バンカーに手紙が落ちているのを発見した。「もし、お手紙を見つけたかたはお返事ください。4年3組」。彼女はそう書かれたメッセージに手紙で返信し、社内SNSでもこの運命的な出会いを共有した。「児童たちが作ったつながりのきっかけを何としてでもカタチにしたい」という気持ちは、社内で当事者たちが驚くほど多くの共感を生み、「ゴルフを体験してもらおう」というプランへと育っていった。

そんなGDOの想いとふじみ野小の堀川博基(ほりかわ・ひろき)校長の理解が噛み合い、この春休み、風船に乗せたメッセージは同校校庭での「ゴルフ体験教室」開催という形で結実した。

拾ったメッセージに返事を送ったところ、4年生全員からお礼のメッセージが届いた

3月の早朝はまだ肌寒かった。校庭に集合したのは5年生への進級を目前に控えた約120名の児童たち。元気な挨拶に大人たちの背筋が伸びる。これまで手紙だけのやり取りだった拾い主のGDO社員との初対面に児童たちは目を輝かせていた。

今回GDOが企画したゴルフ体験教室は、キッズゴルフやゴルフテックなどのGDOが関連会社で展開するレッスン事業からコーチを動員し、準備体操やクラブの握り方、そして安全面の注意などをレクチャーする基礎的な内容がメインだ。使用するのはスナッグゴルフ(Starting New At Golf『ゴルフを始めるために』の頭文字をとってSNAG)。万が一打球が直撃しても硬球のテニスボールほどの硬さであるため、通常のゴルフボールに比べれば大怪我にはつながらない。児童たちにゴルフを楽しんでもらう一方で、校庭というスペースを考慮して安全面の配慮は徹底的に行った。

始めにスナッグゴルフの握り方を説明すると、すでに児童たちは興味津々

いざスタートすると、児童たちの飲み込みは想像以上に早かった。「難しいけどめっちゃ楽しい!」という声も聞こえ、GDOスタッフたちの頬が思わず緩む。今までに体験したことのある児童も中にはいるのかと思うほどだ。見学に来ていた父兄のお一人に同校のゴルフ事情を聞いた。

「多分この学年にはゴルフを習っている子はいないと思いますよ。だから初めてゴルフをする子が大半だと思います。ゴルフって大人のスポーツっていう印象が強いから、はじめは体験教室で子供たちが楽しめるのか、正直疑問がありました。でもこうして無邪気に楽しんでいる姿を見て、ゴルフって子供でも楽しめるスポーツなんだなって改めて気づきました」と話してくれた。

ふじみ野小学校校長・堀川博基(ほりかわ・ひろき)氏

児童たちがボールを打って歓声をあげる様子にひときわ目を細めていたのが、今回の「ゴルフ体験教室」の開催に全面的にご協力していただいた堀川校長だ。

「大成功でしたね。GDOさんからお話を頂いたときは即答で『やります』と回答しました。児童たちにゴルフの素晴らしさを知ってもらいたい、というのはもちろんですが、こうしてバルーンを介して皆さんとつながることができたという“つながり”や“縁”の大切さを伝えたいと思ったのです。こうしたイベントは全員が全員笑顔で楽しんでくれることってあまりないのですが、今回は最後までみんな楽しんでいました。やはり『風船を通してつながった』というストーリー性が一つ、子供たちの中で大きなエッセンスだったのだと思います」

堀川校長は今回の体験教室を前に、たまたま手紙を拾ったGDO女性社員と児童との間で交わされた往復書簡の一つひとつを拡大コピーして教室に貼り、つながりが広がっていくコミュニケーションの面白さや重要性を、児童たちに伝えようと努めていた。

「こうした一期一会の出会いが広がっていくことの大切さを感じてもらいたい、その思いがいちばんです。というのも、何不自由ないこの世の中では、『一人では生きていけない』ってなかなか気づけない。いわば一期一会の出会いといえる今回のゴルフ体験教室も、これだけ多くの方に応援され、励まされています。児童たちがこれから大人になっていく過程で、この感情を忘れずに、大切にしてもらいたいと思っています」

恐るおそる狙ったパターが見事命中して大喜び!

一方、GDOにとって今回の体験教室は、会社としてミッションに掲げる「ゴルフで世界をつなぐ」を目に見える形で実践する貴重な機会でもあった。イベント中のGDO社員の表情に充実感が隠せなかったのは、児童たちのエネルギー溢れる笑顔に数多く触れたおかげ--だけではなかった。もともと縁のなかった小学生たちと“ゴルフを通じて”つながった実感が確かにあったためだ。GDOの大人たちはこの日、児童たちが風船を手放した瞬間に始まったストーリーに関われたワクワクを感じ、実際にイベントで対面すること自体やその責任の重さにドキドキを感じ、ほっとしながらその手応えを会社へ持ち帰った。

一人でも多くの児童ができるだけ永く、風船から始まった今回のストーリーを記憶していてくれたらうれしい。そして、ワクワクしたりドキドキしたりした感情とともに、「ゴルフ楽しかったな」と記憶してくれる児童が一人でもいてくれたらありがたい。<ゴルフのあるストーリー>をひとつでも多く、真剣に作っていく会社であるために、GDOは今回の運命的な出会いを忘れずにいたい。

写真・角田慎太郎 文・PLAY YOUR LIFE編集部/谷

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